ナエ 土屋染色工房 NAE surface printing factory





藍のたて方と、染め方

 日本人に好まれてきた藍色は、濃紺から納戸色、縹色(はなだいろ)、浅葱(あさぎ)、
淡い水色の“瓶(かめ)のぞき”など、濃度の段階を追って色名が順次変わります。
 藍の種類としては、タデ科の草の蓼藍、琉球藍と呼ばれるキツネのマゴ科の木藍、
インド藍はマメ科やアブラナ科の木藍など、葉を発酵させた[すくも]や泥藍を乾燥させた藍玉
などを原料に、石灰・アルカリで還元し発酵させたものと、化学的に藍の色素を合成した染料の
インディゴピュアーがあります。
 藍の建て方としては、古来よりの発酵建てと、化学薬品を用いる還元建てに大別されます。
どちらも原液を調整したのちに染液を作り、藍に含まれるインディゴを還元、浸染した後、
酸化発色させます。
 すくもを使う発酵建ては還元状態を維持するのがなかなか難しいので、手軽に建てられる、
インディゴピュアーを原料とし亜鉛末やハイドロサルファイトなどの、薬品を使う還元建ての
原液調整方法を説明します。

亜鉛末による藍建て法
用具と材料


・インジゴピュアー  :化学精製された藍の粉末。インジゴとは、藍のことです。
・亜鉛末       :藍を安定させ、発酵をうながします。
・石灰        :藍の染液を弱アルカリ性にする。
・メチルアルコール  :インジゴを溶くときに使用する。
・ボール       :25~30cmのもの。
・はかり       :2kg量れるもの。
・容器        :ゴミペール等深さのあるもの。


   

ストックバックを作る。(原液を作ります)


インジゴピュアー 5 : 亜鉛末 3 : 石灰 10 の割合で調合する。


・250g藍をはかり、アルコールで練ったあと、はかりに乗せ、亜鉛末を150g加え、石灰を500g加える。
 お湯を加えながらスプーンなどで良くかき回し、亜鉛末の粒などを良くつぶす。ボールの八分目くらいまでお湯を入れる。


      


・藍を入れる容器の準備をする。
・ポリバス等、200~500リットル位容量のある容器(深さ50~60cmはほしい。)に微温湯をいっぱいにためる。(上から5cm位まで)
・石灰を50~100g位ふりこむ。(微温湯を弱アルカリにするため。)
・容器の準備が済んだら、藍を練ったボールをガスコンロに乗せ、弱火で約30~40分あまりかき回さないで静かに火にかける。


      


・ギラギラした茶色の膜が盛り上がってくる。気を付けていないと吹きこぼれる。
 吹きこぼれると大変悲惨なことになりますのでその場を離れないようにしましょう。


   


・沸騰する寸前まで待ち、火を消す。
・用意した容器に静かに注ぐ。
・静かにかき回し、二日程おいてから使用する。


藍の足し方

・のれんなど、小幅の物を10点ほど染めると藍の成分が薄くなり、濃く染めることが難しくなってきます。そこで藍を足します。
・ストックバックを60~125g位(溶液の量による。)作り、薄くなった藍の染液に静かに足します。


藍の保存

・2~3日の間隔で藍を下から静かに良くかき回す。
・使用する2~3日前に、石灰を振込む。(スプーンで5~6ハイほど)
・使用する前日は、かき回さない。
・本藍は、気温や湿度で微妙に変化しますが、インジゴピュアーの場合は、それほど手をかけなくても良く、気温の下がる冬場は、寝かしてしまっても良い。
・藍の発酵が弱くなり、キラキラした膜が白っぽい色になった場合、石灰を加えることにより、また発酵が促進される。亜鉛末を加えることもある。
・長く使用した藍で、底に石灰が溜まり染布に付着するようになったら、石灰だけを杓などで汲み出す。


その他の注意

・藍は還元染料です。そのため空気に晒されると表面からどんどん酸化してしまいます。容器には、ふたをするようにしてください。(ポリバスなら風呂の蓋)
・冬場は、投げ込みヒーター(500~1000ワット)を入れ、藍の染液が20℃位になるように暖めてから使用してください。
・亜鉛末建てですので、他の方法と併用しないで下さい。
・毎日かき回しても良いが、かき回し過ぎると酸化が進み、藍が染まりにくくなる。
・良く建っている状態は、染液が飴色をしている。(濃度にもよるが、還元した色はほぼ薄茶色をしています。)
・保存場所は、出来れば屋内が良いが、土に埋めても良い。屋外に置く場合は、毛布や断熱材などで保温して下さい。
・藍が氷ると、水とインジゴに分離してしまうので、冬場特に注意して下さい。
・インジゴピュアーは、濃度が薄いと冬場分離しやすいので濃度を高くしておくこと。
・2~3ヵ月放置した藍は、小量のストックバックを足してから使用する。


ハイドロサルファイトによる藍建て法

・インジゴの還元剤としてハイドロサルファイトを使い、アルカリ剤に苛性ソーダを加 える染色法です。
 ハイドロ建ては還元が早く、還元状態を液色によって判断しやすいため、好みの色目を染め分けられる利点があります。
 ウールを染めるときには必ずハイドロ建てで染めてください。


用具と材料

(原液)
    インジゴピュア           :10g
    アルコール             :10cc
    水酸化ナトリュウム(Be’38°) :ph9.5に調整する量
    ハイドロサルファイト        :1~2g/リットル
    温湯 (60℃)          :適量

  ゆるく撹拌しながら50℃に保つとインジゴは還元されて黄色の液となる。

(染法)
      水1リットルに対し
     ハイドロ              :0.5~1g
     水酸化ナトリュウム(Be’38°) :0.5~1cc

      上記を加えた染液に貯蔵原液を適量加え、50~60℃で染色し、均一に絞り、空気酸化、水洗する。
      所定の濃度に染色されるまで、染色、酸化を繰り返す。


藍の染め方
布の精練
・布の20~30倍の重さのお湯で20~30分煮る。あるいは、2~3%のソーダ灰か、 糊抜剤を入れた60℃~70℃のお湯で1時間ほど漬けておく。
 その後、空気中でよく 冷ましてから、十分に水洗いします。


型付け
・糊は、糯粉の分量を増やしたものを使用する。型付け糊にねば糊を混ぜて粘度を増し、尚且つ、石灰を水で溶いてから糊に混ぜる。
 (自分で作る場合糯粉と糠は1:1の割合 にし、蒸し上がって糊をのばす時に石灰も入れてしまう。)
・石灰糊を買った場合はそのまま使用してよい。
・糊に粘気がないと、藍に浸けたとき表面から溶けてくる。
・敷き糊をしてある板に布をしわのないよう貼り、型を付ける。
・表が乾燥したら裏返しして型紙を裏から型付ける。そのとき、裏と表の型がきちっと合うようにして下さい。
・型付けや筒描き、伏せ糊が終ったら、おがくずをふるいでまんべんなくかける。
・布の上と上を二本どりした糸で縫い合わせる。張手にかけよく乾燥させる。
・糊の厚さは、厚くする。(薄いと藍が浸透しやすい。)


地入れ
・1リットルあたり二掴みの大豆(約100g)を水に5~6時間浸け、十分に柔らかくなったものをもどした水と一緒にミキサーにかけて、細かく摺る。
 摺り鉢で摺ってもよい。
・目の詰まった布で作った漉し袋で漉す。これを、豆汁という。
・豆汁を二度引く。一回裏表を引き、乾燥させてから二度目を引く。
・二回目に小量の石灰(スプーン一杯)を入れてもよい。(布の厚みや種類による。)
・標準的な暖簾で、約1リットル必要でしょう。
・2~3日乾燥させる。


藍に浸ける

・床、屋外に、毛布あるいはゴザなどを染布の長さより長くなるように敷く。
・張り手にかけたまま引っ張り、裏表引き刷毛でお湯を引く。


   


・染ぐりなどの太い伸子を布の耳に縦の方向にかけて行く。(伸子と伸子の間が5~6cm あくようにします。つきすぎているとたたみにくくなる。)


   


・張り手から取り、伸子を持ち、端から屏風だたみにたたむ。
・水槽に蓄めた水の中に静かに降ろす。水の中で染ぐりを一本づつ持ち変えて布と布の間が離れて空気の泡が取れるようにします。


   


・静かに水から出し、伸子の中に棒を通す。その棒ごとかけられる場所に架け、全体が均等になるようにひろげ水を切る。


   


・布の下から水がポタポタ落ちなくなったら、(木綿で3~5分、麻で1~2分)糊を傷めないようにして伸子を中央に集め棒から抜く。
・藍のキラキラ膜を隅に寄せ、藍の中に静かに降ろす。


      

   
・水を切った時と同じ要領で藍の中で伸子をひろげる。
・染める濃さによって漬けておく時間が違うが、だいたい3分ほどを目安とする。
・3分経ったら伸子を中央に集め、静かに持ちあげる。


   


・伸子を一本づつ持ちかえ、布に空気をあてる。(これを”藍の風を切る”と言う。)
・藍から上げたばかりは飴色していたものが徐々に緑がかりやがて青く変色してくる。


   


・張り手をかけ、上に上げ、伸子を取る。引き刷毛で表裏を軽く擦る。


   


・伸子を先にかけた方と違う側にかける。


   


・張り手から取り、伸子を持ち、端から屏風だたみにたたむ。


   


・一度目と同じように作業を進める。


      


・二度目が染まったら張り手に架けて、乾燥させる。(中干しと言う。)


      
      


・始めから繰り返して染め、合計四回藍に入れて終了する。
・うす藍にする時は、二度染しない。
・麻は、染つきが良いので染める時間を短くしてあまり濃くならないようにする。


水元

・静かに布を広げながら水に入れる。30~1時間位漬けておく。
・布が水の上に出ないようにしておく。
・糊が完全に取れたら、3~5回水を取り替えながら良くすすぐ。


         


・たらいの淵に布端をのせ、張手に掛ける。
・張手を持ちながら静かに水から上げる。(脱水はしない。)
・あまり引っ張らずに乾燥させる。


   

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